2006年07月11日

少年少女Got Short Dance

 騒音の中で並んだ4人は、誰からともなく自然に手をつないでいた。顔を見合わせ、つないだ手を大きく振り上げると、2500人の喝采が空気を揺るがした。壁に大きく表示された21:07のデジタルが歪んだかとも思える音は、間違いなく新しい世界の扉が開く音だった。
「がぁー、やべえ、オレ完璧にハートをぶち抜かれた!」
フィフスが喝采に負けないように大声で叫んだ。
「これ、何ですか?ドォワーって、これっ、僕たちに向かって飛んでくる音ですよね!」
ドクタが涙を潤ませて笑いながら叫んだ。
「気持ちイイーって、脳が踊って喜んでるよ!」
まるで自分に伝えているかの様に、ヒメは宙に微笑みかけて叫んだ。
「お前等サイコーだぜ!」
新しい世界の全ての住人達に、キョウが心からの言葉を放った時、星空にはこの日3発目の花火が、全ての苦しみを浄化しながら美しく燃えていた。

【1】 [ドクタ -始まりの為の終わりの始まり- ]

 肩にかけたベースが重いので、何度も左右にかけ直しながら、夕方の慌ただしい商店街を僕はゆっくりと駅に向かって歩きます。途中には大型家電ビルがあり、店頭に並ぶ10台の液晶テレビは全部同じチャンネルです。その前迄来ると、川で6歳の男の子2人が行方不明になったというニュースを、眼鏡をかけた知的で綺麗な女性キャスターの顔10個で投げかけてきました。僕はそのキャスタ−の左斜め上に浮かぶ17:03の数字を確認すると、そこで立ち止まりました。スタジオの入り時間に余裕がある時は、ここでボーと、テレビを眺めてから行くのです。
 次のニュースは、毎年8月恒例の野外音楽堂でのライブが17:00から始まったというものでした。野外音楽堂は隣街にあって、僕も行きたかったのですけれど高価なのと、文化祭バンド[2年10組]の練習があるのでチケットを買わなかったのです。でも本当は、練習なんてどうでもよく、ライブに行きたいというのが本音なので、10個の画面に映し出された会場前の映像に釘付けになっていました。
 その時、近くでくぐもった音が聞こえ、直ぐ側に人が立っている事に気づきました。ゴリゴリと何かを噛み砕く音源を見ると僕と同じくらい、17歳くらいのサラサラの黒髪と透き通った白い肌の女の子が居ました。彼女も映像に見入っていて、僕の存在等全く気づいていない様です。ゴリゴリという音が小さくなるとポケットから何かを口に運び、また噛み砕き始めました。画面が、知的で綺麗な女性キャスター10個に戻り、次のニュースを投げ始めると、女の子は駅の方へと歩いて行きました。
 僕も行こうかと、ベースをかけ直すと肩を叩かれ、振り向くと顔に激痛が走りました。お腹にも数回何かがあたる痛みがあり、やっと目を開くと僕と同じ歳くらいの女の子が2人、指をさしながらケラケラ笑っています。一人はショートカットのとても綺麗な顔で、もう一人は金色の長い髪を束ねた太っちょ。どちらもジャージにビーチサンダルです。
「マジ日本語通じないんじゃね?」と太っちょが言うと、
「幽霊と話してたじゃん、日本語喋るインドジンっしょ。うわ、鼻血だしてるよキモー!」と綺麗な顔が口を大きく開けて笑いました。
 僕の左右には20代前半くらいの男が2人立っていました。両方長い髪がオオカミみたいで、一人は汚い灰色、もう一人はくすんだ黄色です。さて、僕は何故殴られたのかと、痛む脇腹をおさえながら黄色オオカミを見ていると、横から灰色が僕の顔を蹴り上げました。ベースを落とした僕はそのまま倒れ込み、「痛ってぇ…」という言葉と、口に溜まった血を吐き出しました。
「やっぱ、日本語喋れんじゃん。インドジンさ、幽霊の何なの?」と黄色オオカミ。
「ユーレイ…?」何の事だろうと思いながら、これ以上怒らせるとヤバそうなのでうまく答えなきゃと考えてると、
「テレビ観てたろが」と、髪を掴まれ顔を引き上げられました。
また殴られるかと、咄嗟に顔を手で覆いながら「テレビ…野音?」と言った途端、
「はい、タイムオーバー。インドジン拉致決定ね、おめでとう!」と、灰色オオカミがにこやかに言い、黒のオデッセイの後部座席に引きずり込まれました。通りを行く人が僕をチラっと見ましたが、無関心を決めて歩き去ります。世界はこんなものなのだ…大丈夫、解ってるから。
 黄色が運転席に乗り込むと、すぐに車が動き出しました。リアウィンドウ越しに赤い髪の人が手を振る姿が見えたので、手を振り返しましたが、灰色に殴り倒された為シートの下に。
 インド系の父のおかげでトラブルには慣れっこだけれど、拉致はヤバいな…何とか逃げれないかな。鉄の味がする。ユーレイって何だろう。スタジオ間に合わないな。あれ、ベース何処だろ。赤毛君見送りありがとう。…と、汚いシートの裏を見ながら、僕は色々と考えていました。



 ■■■ 作者から一言 ■■■

緩やかに それは とても緩やかに 過ぎるものだから
        キャッチする なんてことは 叶わなくて
             誰もがみんな  過ぎてから  気づく

    「それが とっくの昔に 過ぎ去った事に」

それでも 過ぎたそれを 大切に 大切に 心に刻むことは出来るはず
      その動きを 和倉は こんな感じに起こしました

          これは あの瞬間の 物語

  そして この瞬間も 過ぎてゆく
                  それは 緩やかに とても緩やかに


posted by 村松恒平 at 23:34| Comment(3) | TrackBack(1) | 少年少女Got Short Dance | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
誰か先に「コメントしてくれないかな」と、待ってましたが、、、、一番手の様なので、ちょっと気が引けます。
この文章の最後はハッピーで終わる事は分かりますが夏目漱石の「我が輩は猫である」の様な書き出しだと文章の頭から流れるように理解し易いと思いました。待ち時間の状況は少し短くてもよいのでは。
4人の盛り上がりの理由が早く読みたいです。

Posted by 泰松 at 2006年07月31日 00:32
泰松 様

貴重なコメント有り難うございます。
今後の創作活動に活かしていきたいと思います。

次回、第二章[ ヒメ -落ちるモノ、響く音- ]
乞うご期待下さい♪

-和倉-
Posted by 和倉 at 2006年08月03日 14:18
さて、「ご意見ありがとうございます、イングリッシュ アマチュア ポーン様、大変参考になりました。今後とも宜しくお願い致します」
と、受けるべきか。   
…それとも、「管理人様、少年少女に悪影響を及ぼす可能性がございます。御手隙きでしたら、削除をお願いします」と普通に書くべきか。
何気にリンク飛んじゃって、誰かの腹を膨らますのも癪だしね〜@。@ な〜んつってなby ミルクちゃん
Posted by 和倉 at 2006年10月05日 00:31
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

蚯蚓
Excerpt: 村松恒平責任編集/ブ...
Weblog: 村松恒平 文章学校
Tracked: 2006-07-15 21:28
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。